しろこが寄り道する

社会人3年目女。HSPとして、仕事や趣味(観劇、読書、アニメ)への思いを綴ります。

小説を読むことは、知識を技術にすること

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今日は読書から父親のことを考える回です。

小説を読むって、生活を幸せに送るために本当にオススメですよ

今回紹介するのはこちら。

 

父親ってのは不思議な生き物だと思う。

 

姉が結婚した夜。

いつもどおり晩酌しているだけなのに、父の背中には寂しさが漂っていました。

それは、あまりにも強い素直な父の気持ちなので直視できず、私は慌てて今から逃げ出しました。

でも思わず愛おしくすら感じるほどの純粋さでした。

 

父親は、娘が結婚すればそういうもの、と言ってしまえばそれで終わりです。

でも、私にはどうも父の気持ちが想像しきれなかったのです。

 

というのも普段、姉と父はそんなに仲良く話していたわけではありませんでした。

30を超えた姉は、片付け下手で人の話を聞けない父を「ほんとうにダメだよね!」と怒っていました。それに対して父は形ばかり「ひゃー」と反省して、実際の片付けは姉。

今日あった楽しいこと、悲しいことを会話することはない。

進学や結婚など、節目だけは会話するけど、それ以外は腐れ縁の友達くらいの距離感。

 

そんな父のどこに、あそこまでの寂しさが隠されていたんだろう。

 

父と私は、立場も性別も性格も違う。

だから、私が相手の気持ちを想像することはできっこないのだろうか。

 

人の気持を想像するって超ムリゲーだと思う

でもそうしたら、会社の人、友達、恋人の気持ちはわかりっこないことになる。

一言に会社といっても、

40代の独身女性上司、

40代の女の子2人持ちの男性、

20代の未婚の同期、

30代の既婚で子供なしの先輩、気が遠くなるほどいろんな立場の人がいて、

その人達の気持ちは想像できっこないことになる。

そうしたら、私はその方々にどんな言葉をつかって会話したらいいのだろう。

私は目の前の相手の心の中にある、寂しさや恐怖を知らないで相手を傷つける言葉をかけたら、

いつか嫌われるかも知れないな。

 

そう考えると、私は無性に独りになることが怖くなって、

父のあの哀愁の正体は、どうしたって知りたいものだったのです。

 

小説との出会い

ある日、暇潰しがてら古本屋をぶらぶらしていました。

古本だから、流行りの本が並んでいるというよりは、一度読まれて、でも売られて、

どこかどんよりした雰囲気。

ふと、目に止まった本がありました。

 

「父親」

www.amazon.co.jp

 

遠藤周作。イエスキリストの著作で有名な人。

毎月1冊は小説を読む私ですが、気づいたらレジに向かっていました。

 

ストーリーは戦後間もない日本で、主人公の会社勤めの男性には1人の娘と1人の息子がいます。娘は不倫してしまい、その二人に対して「相手のことを想像できる力が必要だ」と諭します。

 

読んでみて思ったこと、なんとまあ、父親の思考ってのは、短絡的で純粋な『男の子』だと。

同時に、年長者としての責任を踏まえているものだと。

 

短絡的で純粋な『男の子』

「いつまでも手もとにおいておきたいのだ。あたり前だ。手塩にかけて育てた娘を滅多な男にわたしてなるものか」

 

「独身でもいいわ、一生、パパのそばにいてあげるもの」

「迷惑だね、お前、結婚する気ないのか」

迷惑だねって言葉ではいうのかと。

 

父が、私に「お前はまだまだ子供だから結婚は早い」「お父さんほどの人間はいないがな、なに彼氏できたのか」などということがなんだかとても可笑しくなります。

 

謎が解けた。父が喜ぶメカニズム

父はいつも、自分の感情が動くのではなく、私の反応によって感情が動いていると感じていました。

母とは反応の仕方が違います。

そのわけは、私がどういう人間かということ以上に、私がどんな反応をしてくれるか、で男性は満足するからでした。

 

年長者としての責任

一方で、自分の行動が相手にどういった影響を与えるか想像する大切さ。

こここそが、私がまだまだ足りていない部分でどきっとしました。

 

小説を読むのって意味あるの???と考える人が多いと思います。

私もそのひとりだったので、分かります。エッセンスが箇条書きにされてないから、時間ばかりかかるばっかりで、知識を得られた気がしないんですよね。

 

翌日から、つい、なにか業務をお願いするときでも、

友達と話すときでも、相手のことを想像するようになりました。

その時の私には、小説の主人公のお父さんの優しさが、乗り移っていると感じます。

想像して、こういう意味かなって伝えて、相手がちょっと違くてって言ったら、

一生懸命理解しようとするようになりました。

 

でも、小説は知識を得るのではなく、知識を技術にするためにあると思うのです。

だって、例えば「逆上型上司にはこういった言い方をするのがベスト!」といったノウハウ、上手に使えます?そうした本を読んでしまう時点で、コミュニケーションに引け目に感じているわけですが、とっさに出てくるのは知識ではなく、自分が経験したことです。

小説は、主人公の目線に没入して、まるで自分が父親になったり、不倫したり、そういった気持を体感することができる。小説には、きっと救い手がいます。

その時は、どんな風に振る舞ってくれた?どんな言葉を使ってくれた?それがあなたの経験になります。

 

小説読もう

父親は今日も澄まし顔ですが、私にはいつもと違って見えて、少しうれしくなります。

スマホで答えのない検索をダラダラするより、本を読むと、人の気持に触れることができるかもしれません