遠藤周作「沈黙」「海と毒薬」「白い人・黄色い人」
ストーリーは何とも暗いものが多いですが、
人の心の描写がとても美しいです。何度も読み返したくなります。
遠藤周作は、「日本人」というその国民性にスポットライトを当てています。
「日本人が信じるキリスト教」「罪の意識なく人体実験をする日本人」
私は1年間ニュージーランドに留学をし、1年間教会に通ったので、
確かに日本人の国民性の特殊さを感じました。
日本人は「絶対的な一個の存在(キリスト)」「絶対的な価値観(たとえば、神から授かった命は決して自ら断ってはいけない)」より、全体の和を大切にするのかもしれない。だから多様性を重んじる。けれど、多様性というのは倫理観の欠如と紙一重なようにも思います。「コレだけはやっちゃいけない」という決まりがどうしても少なくなるからです。
それが罪の意識なく人体実験をする日本人を想起させもします。
私は社会人一年目の頃、会社で毎日周りの先輩方を遠巻きに見ていました。
一つ隣の課の先輩が、心に汚い思いを潜めながら笑顔を作っているのが分かります。
ある人が、失敗した人に優越感を感じながらフォローに入っているのを感じます。
私はそれを毎日感じるだけで、苦しいです。
ふと、「海と毒薬」のラストの文章を思い出します。
『勝呂にはできなかった。できなかった……。』
罪を罪と感じることができなくて苦しむ人、
罪を罪と感じて苦しむ人。
私は両方を受け入れられるような大きな器を持てる人間になれればよいのですが。
私は後者の人間で、ただ苦しんでいるだけの状態です。